水族館は休日なのでかなり混んでいた。

中に入ると、少し暗く、込んでいるわりに空調が効いていて心地よかった。

人波に流されながら、水槽を眺めると色とりどりの魚が幻想的に泳いでいた。

『ヤバい・・美味しそう。お昼はお刺身が食べたくなった。

あぁカレイは煮つけがいいな・・鯛は塩焼き?アラは味噌汁?お茶漬けもいいなぁ』

水族館の魚を食べる事前提で見てしまい自己嫌悪に陥っていたら「綺麗だな・・」と隣から凱の声が聞こえた。

その声にハッとして凱の方を見るとじっと水槽内の魚を見ていた。

『!?』

「・・そう、デス・・ね」

その真剣な横顔がかっこ良くてドキリとする。

『あぁ、邪な気持ちで見ていたのバレて無くて良かった』

自分は不謹慎にも泳いでいる魚の料理を考えてしまっていたが、凱は純粋に泳ぐ魚に感動している。

その姿をみると良心が痛んだ。

『ダメだ食べ物の事ばかり考えちゃう。・・・』

鯖を見れば、煮つけが良いか、塩焼きがいいか悩み、鯛をみれば、刺身か茶漬けで悩む。