『仕事だったのかな』

「おはようございます。今日もお仕事だったんですか?」

「おはよう。本社に行っていたんだ」

助手席のドアを開けてくれる凱。

この行為も毎回されると慣れてくるようで、始めはぎこちなかったが、最近ではスムーズに乗り込む事が出来るようになった。

高級国産車のシートの座り心地の良さに驚き、内装をチェックして興奮し、滑らかに発進する事にまたまた驚き、つい子供のようにはしゃぎそうになるのを必死に抑えた。

『凄い、このレクサス最上位車だ・・・あ、そりゃ、当たり前か』

車内を素早く観察した後、窓の外を見ながら考えた。

車も好きな杏奈は、本当は穴が開くほど車内を見たかったが、見た目とイメージが違う事は極力避けたいので、ぐっと堪えてやり過ごす。