「取締役が来てからが最悪だった」

もぐもぐと頼んだカツとじ定食を食べながら、最悪と言う割りに楽しそうに話す鈴木に更なる不安がよぎる。

もう何も食べる気にならず、箸をおいて膝に両手を置いてこの世の終わりのような顔をした。

「まぁまぁ、そんな顔すんなって」

慰めてくれているのは分かるが、今は全く心に響かない。

「さっさと話せ」

「ちぇー。それで、取締役が小鳥遊の名前呼んだら、反射的に立ち上がったんだけど、フラフラで、俺に寄りかかったまま、食って掛かって」

『終わった。』

「んで、取締役が宥めるのも聞かずに、『一緒に帰らない!凱なんて嫌い!私の事女として見てないくせに、優しくしないで』って!」

杏奈の真似をしているらしく、ちょっと声を高めに話す。

「死にたい・・・」

もう、恥ずかし過ぎてテーブルに突っ伏してただただ、そう思った。

「酒って怖いな」