「「 かわいすぎて直視できないかも」」

俺は壷林さんに背を向けながら言った。

いや、言ってしまった。無意識に。

だって本当に 可愛かったから。

(うわぁ俺きも…)

余計顔が赤くなる。

直視できないのと、全力で顔を隠すため、背を向けるしかなかった。

だから、
「私、着替えてくる」
そう言った時の壷林さんの表情が、見えなかった。


––––––––––––気持ち悪がっていただろうか

それとも…

「日奈太〜!!!!」

教室の後ろのドアの前で、俺を呼ぶ声。

この声は–––––––

るい。 汐田るいだ。

俺はるいに調子を狂わされる。
だから、ちょっと苦手…だったりして。

(いやいやいや、俺性格悪すぎ)

曲がった思考を直すため、少し手をつねってるいの方に行く。

「おい、大丈夫かよ!?一応、授業なんだぞ?」

「かまへんかまへん!ちょっと抜けたくらい気づかへんって!!!」

「で、どうした?」

「いや、さっき顔赤くして出たった壷林さん見て、イケメン執事河野君が関係してると思いましてねー」

心臓がはねる。

〝赤く〟してでたった?
ポジティブな方に考えてしまう。

「怒らせたん???」

「…ん?」

怒らせた?
まぁ、怒ったら顔は赤くなるかもしれないけど…

心配になって俺の行動を振り返りながら、声に出す。

「いや、俺は怒らせたつもりないけど…なんで?」

「だって 、壷林さん

お前と『もう関わりたくない』

言うとったからなんか関係してんのかなーって!」


関わりたくない 。

壷林さんが ?

混乱して、頭がうまく回らない。

「あ、ほな俺そろそろ戻るわー」
無邪気にそう告げ去っていったるい。


そうか
俺が壷林さんと関わろうとするのが、迷惑だったのか 。

るいが言っていることが本当なのかは知らない。でも、ちがうと言い切れる自信がない。

俺のあの無意識な言葉で

〝赤く〟の意味が

壷林さんが照れて だとか、

俺のことを少し意識してくれていたら

なんて。

なに期待してるんだ。


〝関わりたくない〟
それに同感はできないけど。

でも

関わらない方がいい ー

これが、混乱した俺の頭が出した、答えだった。