「こ、河野くんは…?」

そう聞いた彼女は下を向いていた。

なにか、自分が悪いことを聞いたみたいに。

–––––––これが壷林さんの儚い優しさだ。

根拠もないけど。
なんて言い表していいかわからない。
でも、俺なりに簡潔にまとめると…

壷林さんは優しい。

優しさには種類がある。
これは、俺だけがよーくわかっていること。

壷林さんは、他とは違う〝優しさ〟を持っている。


–––––––––ねぇ、壷林さん。大丈夫だよ。

壷林さんは何も悪くないよ。

自分が悪いことを聞いたように下を向かないで。

むしろ悪いのは俺の方。

俺の–––––––––––



裏を



秘密を


こんなに優しい壷林さんに言えないんだ。


ごめん。

俺に勇気がなくて。

嘘つきで–––––––––




「俺は… しんどいの嫌だからなぁ〜!」

罪滅ぼしのつもりで、できる限りの笑顔をつくる。

俺の作り笑顔を壷林さんはみあげる。


壷林さん。…俺の好きな人

この嘘つきな口を 許してください ー