「君は…さっきの!」
「あの…先程は、父がご迷惑をおかけしました。それと、ありがとうございました。」
「いやいや、ご丁寧にこちらこそありがとう。でも、良かったよ…お父さんが無事で。」
にこやかに微笑む顔を見ると、少しだけホッとする。
「あの後、お父さんは大丈夫だったかい?」
「重度のうつ病みたいで…入院することになりました。」
「そうか…。お医者さんに任せた方が安心かもしれないね…。あっ、そうそう!」
ポン、と手を叩いて何かを思い出したように話し始める坂田さん。
「さっきの、あの男の人なんだけど…追いかけて情報を聞こうとしたんだけど、何も答えずに行ってしまったんだよ。」
あの男の人、というのは勿論パパを救ってくれた人だ。
「そうなんですか…。もし、何か情報が入ったら教えてもらえますか?きちんとお礼がしたいんです。」
「うん、そうだよね。分かった!じゃあ、念の為に電話番号聞いてもいいかな…?」
「すみません…。今まだ持ってなくて…、手に入れたら教えます。」
家の電話はもちろん、携帯も持ってない。
でもこれから、病院とのやり取りもあるだろうし、早く契約しないと…。