三月二十五日、相変わらず辰也はうるさいし、お父さんとは話せない。お母さんは私が勉強を頑張ってると信じて喜んでいる。


今日は二人とも仕事がないのでずっと家にいる。親がいるときはましになるので、ソファに並んで座る二人を見て、ホッとしていた。


リュックサックを背負い、見せつけるように居間を通過していく。


「いってらっしゃい」


「しいは登校するのか?」


「うん。自主的に勉強しに行ってるの。いや〜二年生が楽しみだわ〜」


勉強なんて投げ捨てていることも知らず、二人は素直に感心していた。
ちょっと悪い気はするけど、どうしても真剣に取り組むことはできない。


今日はちょっとだけ頑張ろうかな。ほんのちょっとだけ。
数学のプリントに向かう私と、期待して喜ぶ二人を想像し、顔を引きつらせながら家を出た。


さて、昨日から乙女と呼ぶことになったので、あいつらは何かしら言ってくるだろう。そこを乙女にできるだけ気付かれずに始末する。


さあ今のうちに好き勝手言っておきなよ。一年間の苦痛に終止符を打つからね。
自分がチャンスを逃しやすかったり、人と話すことが苦手なのを忘れて、意気揚々と足を進めていた。