またちゃぶ台があるあの部屋に案内され、座布団に座して種を待つ。


安芸津さんの手には茶封筒があり、おもむろに茶封筒を傾けた。


「えっ、立ったままは溢れたときどこにいったかわからなくなりそう……」


「あ、そうだな。よいしょっと」


ちゃぶ台に手をついて腰を下ろす。
安芸津さんでもよいしょとか言うんだね。なんかイメージから離れてる気がするけど、イメージ通りな気もする。


手のひらにのせた種を茶封筒にぽろぽろと落とす。
大きさや形は違うけど、どれも黒い粒だった。


「違う種ですよね……」


「ああ。何種類かあるんだ。一応種類で分けてまいたがどれも出ないんだ」


「……ナガミヒナゲシ?はないですよね。すみません」


一番小さい種を見て思いついたけど即座に否定する。
ナガミヒナゲシなら出ないなんて悩むことはなかった。コンクリートの隙間、校庭の隅、庭……あらゆるところに生える、オレンジ色のポピーに似た花だ。
ナガミヒナゲシと言わず種を渡すなんて、除草に追われろと思うくらい嫌われてるのかなと思ってしまう。


「わかりませんね……」


「そうか。でも仕方がないな。本で調べようとも思ったが種を載せているのは見つからなくてな……そんな本があったとしても、名前を見つけ出すのは至難の業だがな」


黒い粒状の種は多い。スマホを駆使する私も見つけ出すとなると気が遠くなる。