理由があれば、私は仕方ないと思ってしまう人間だ。
今までの陰口もそれらしい理由を知れば、仕方がないと思えてしまうのだろう。


親に言っても無駄だった。先生に言っても無駄だった。
なら自分が変わるしかないと思い始める。


いじめていい理由なんてない。いじめる方が悪いんだ。


そう言ってくれるのは嬉しいけど、その言葉は私を救わなかった。
でもこの言葉の全てを否定はしない。救われた人もいるんだから。


更衣室に到着した私は、中身を取り出した後、袋を地面に落とした。その上に中身を落とし、ジャケットから片腕を出した。


脱いだジャケットは後で畳むことを前提にして、また床に落とす。そして下のシャツごとセーターを脱ぐ。


一枚一枚脱ぐと時間がかかるから、私は脱皮するように一気に脱いでいた。
畳むと嵩張るけどそんなこと気にしていられない。


この前の体育の時にまとめて脱いでいたおかげで、ジャージの中にはシャツが仕込まれている。
しかしこれは少し厄介で、外は長袖なのに中は半袖だから、中で袖の位置がずれると腕が出せずにもごもごするはめになる。


だから袖の位置だけは整える。
いざ!中に突っ込み、袖の位置を確認し、腕を伸ばす。


当たりだったようで、スムーズに手が出てきた。片方が上手くいけば大抵もう片方も上手くいく。


両手が出たので、スカートの下からズボンを履く。
ファスナーを動かし、スカートをぼさっと落とせば着替えは終わりだ。
適当に畳んで袋に突っ込み、何となく教室に戻りたくなかったからスマホを取り出していた。


ああまたやってる。
最近、一つの言葉が全てを救わないということを忘れ、自分の場合はこうだった、と詰めかける人が多い。
他の道を探せばいいのになんで上手くいかなかった道を踏み荒らすのか。踏み荒らす時間を探す時間に充てればよかったのに。


私はそうして、沈黙することで自分を守る方法を見つけた。


私は浅野 思意(あさの しい)。高校一年生。
何かを思い続ける人になってほしいという望みを持たされた。
多分その望みを実現していると思う。