数学の授業が終わり、やらなくてもいいけどと付け足してプリントが配られた。


やりたくないけど頑張っているとアピールするためにやっとくか。
真ん中で折ってノートに挟んだ。


「全然わからん。今更別の方法教えられても困るんやけど」


大和さんが耳打ちしてきた。同意して深く頷く。


「私も一年間それで困ったよ。違う方法使って間違えたら、先生が言った方使えばよかったのにとか言われるし……」


耳打ちの時の声量を出すのが苦手なので、変わらない声で言ってしまう。
大きな声も出せないけど小さな声も出しにくい。調節が下手なんだ。


大和さんがたははと苦笑いしたところで、机に影が落ちる。


「見たことない子がいるなと思ったら、あさのんの友達だったの?」


あまり話したことのない女子に話しかけられれ、まあそうだね……という歯切れの悪い返事を返すことしかできない。


あさのんとは呼ばれているけど、それほど仲良くない。面白いと思うことも言うけど苦手意識があった。
由布さんは男友達が多く、容赦ない発言で周囲を笑わせている。


サバサバしてるとか、もはや男とか言われることもあるけど、話し方や女子への態度を見るとどう考えても女子だ。
信用はしていないので、大和さんに何を言ってくるのか身構える。


「大和 乙女といいます……。二年生になったらお世話になります」


肩を縮こませながら、顔色を伺うようにしていた。


「乙女?名前可愛い〜。あたしは由布 星愛(ゆふ せあ)って言うんだ」


「うちは永見 理緒(ながみ りお)。四月になったらよろしく〜」


「よろしく……お願いします」


先生の時以上に縮こまる大和さん。まあこの二人に囲まれたら仕方ないけど。