それからはスムーズに教室に到着した。


自分の机にリュックサックを乗せ、横のフックから体操服袋を取る。


うわー来たよ。


そんな声が聞こえた。
一応私に配慮、というかバレないよう小声で言っているけど、聞こえてる。
そういうの、先生に言っても無かったことにされやすいし、嫌いだ。
本当に言われた方が傷つかないようにと考えるなら、正々堂々と言うか口を閉じてほしい。


言われたかもしれないし、言われていないかもしれない。
時間が経つにつれ、事実かどうか、言われた本人も分からなくなってきて、結局何も出来なくなる。
そうか、それを目的にしているのか。


卑怯な。
何か不満があるなら言ってくれないと解決できないのに。陰で言うだけで本人に指摘しないなら、直さなくても良いということにするよ?


私の容姿を馬鹿にして笑う男子たちに対し、ある感情が積もり、嵩を増していた。
しかしその感情をぶちまけることはない。


マイナスの感情を大きく出すことほど醜いことはない。
それが私の精神の柱になっていた。
今までマイナスの感情を爆発させて、良くなった試しがない。


何も言わずに教室を出て、気づかないふりをしてあげる。
私を叩いて楽しそうにしている二人を邪魔しなかったんだ、そこそこ優しいよね。
自分にそう言い聞かせて、爆発しそうな感情を鎮めた。