待ち望んでいた春休みは、九時という微妙な時間に始まった。
カーテンから日が漏れ、何時だろうと思いながら開けた。向こうの家の窓が西日を反射し、目が痛い。何となく人が起きる時間ではないなと感じた。


充電から引き抜いたスマホを見て、やっぱりちゃんとした時間ではなかったなと苦笑いする。


居間にお母さんの姿はなく、ラップに包まれた朝ごはんが机にあった。
電子レンジに突っ込み、電子音が鳴れば取り出して机に置く。


何も考えずご飯を噛み潰していると、辰也が壁を蹴る音がした。
低く、そして短くまとまった音。私には物に当たる理由がわからない。


「死ね!」


気に入らないことがあったら付け足すように言ってるけど、何に対して死んでほしいと思っているのかわからない。
電車遅れてた、突然ペンが壊れた。そんな些細なことで死ねと言うんだ。


それも辰也に限った話ではない。少なくない人数が、些細なことで死ねというんだ。これもやっぱり何に対して言っているのかわからない。


どうしようもないことの、行き場のない感情をそれで発散しているのかもしれない。しかし、発散させるだけにしては重すぎる言葉だ。


わからない。
聞いてて気持ちいい言葉じゃないし、今口に入れたものも味気なくなった。