さて、早く帰って見せなきゃ。
踵を返しながら苦い未来を予想して、口を歪めた。


一向に暖かくなる気配はなく、マフラーに顔を埋める。
冷気の中を突っ切る足は、冷えて感覚も消えそうになっていた。
スカートにも靴下にも守られない脛の一部は、触ると驚くほど冷えている。


今日で使用期限が切れる定期を差し込み、この駅最後の改札を通らせた。
冷たい風を遮る壁も、絶えず熱を発するものもないから、駅のホームは街中と変わらず寒い。


電光掲示板を見ると十分以上後に来るらしい。それまで冷えていなければ行けないのかと思うと軽く絶望に近づいた。


気を紛らわそうとスマホを取り出し、毛に包まれていて暖かそうな猫の画像を漁った。
気が済んだら小説アプリを開き、新しい作品を探す。


アナウンスが入り、やっとかと思ってスマホから目を離した。
しかし車両が見えてもすぐには乗れないのがもどかしかった。くすんだガラスの向こうにいる、スマホを使う人たちが羨ましい。


降りて来る人を待ってやっと乗り込んだ時には冷え切っていた。冷気に晒された顔や鳥肌が立った腕に暖かい空気が染み入った。