学校とは、生気を吸う場所だ。
たとえ楽しい日であっても、帰る頃には疲れ切っている。学校での行動は、なぜか少なくない量のエネルギーを消費する。


今流行りのケバい化粧、短いスカート、大きな声という、私が苦手な属性を付けまくった人が校門を広がって通る。
なんであんな濃い色の口紅が流行ったんだろう。流行るだけならいいけどなんで似合ってない人までつけるんだろう。


濃い口紅、頬骨に集中したチーク、元から日焼けしてないから白いのに、変に真っ白な粉を塗りたくるから不気味な顔色、ぼやっと浮かび上がる顔にはっきりしない灰色や茶色の眉毛……。


私の理想の真逆をいく流行だ。
まあ流行なんて他人の勝手だし、私は似合うものを選ぶだけだ。流行に逆らって周囲から浮くのも、今に始まったことじゃない。


自分の意見は言えなくても、見た目で流行に逆らうくらいはどうてことないんだ。


今も、膝下の長いスカートにアクセサリーもつけない真っ黒の髪、ワンポイントだけ入った紺の靴下という、標準に逆らった格好をしている。


靴だけは大きな花柄だけど、これは私が出来る些細な自己表現だ。これを履く一番の理由は、自己表現ではなく履き心地だけど。


メッシュ素材なので夏でも履きやすいし、クッション性も良くて、なにより軽い。このマラソン大会に適した靴だと思う。


水たまりを踏むと水が染み込んでくるという弱点もあるけど、踏まなければ良い靴だ。
お気に入りの靴を下駄箱に入れ、上靴に履き替える。


談笑しながら広がって上る人たちの後ろから階段を上る。
追い越すか、追い越さないか……。歩くのが速い私は、前のめりになった気持ちが前の人たちの背中にぶつかり、もどかしさを感じている。


なんで話すだけでこんなに遅いのか。
一段、一段、と間がある足取りが理解出来ず、イライラしていた。
しかし追い越すのも疲れるものだ。


結局私は朝から気力を使い果たしたくなかったのでそのままにし、踊り場で進路が分かれた途端元の速さに戻した。