「あ、私ちょっとこの辺で。寄るところがあるねん。さよならー」


「さよなら……」


話し込んだ時間に比べ、別れる時はあっけなかった。でもまた会えると思ってくれたから、大げさに手を振ったり振り返ったりしないのかもしれない。


そうだ、四月になればまた会えるんだ。
そしたら連絡先を交換したいなと思いながらスマホを取り出す。帰りはスマホの地図を使って確実に帰りたい。


二又の指を離し、拡大しようとした時、見覚えのある漢字を見つけた。
近くにスタート地点だった公園がある。


ちょっと歩いてみよう。
あの日と同じ、奇跡的な出来事が起こるとは限らない。けどあの景色に心が惹かれて足も引っ張られていく。
急な斜面で傾く足首。なんの根拠もない期待で心臓が激しく動き出した。