それから、学校で表彰されたことはないけど、ゲームのイベントならいい線いくという話になった。


特に河芹さんの記録はすごかった。上位に入るため限度額まで課金し、徹夜でプレイしたという。
私はスマホを持ったのが入学と同時だったから、まだイベントに入れ込んだ経験も少ない。けどこの先続けていってもそこまで力を入れることはないだろう。


川芹さん、イベントのランキングも学生としては常に上の方をいっているから、ちょっと有名になっているのではと思う。


「もしかしたら名前を覚えてるって人も多いんじゃない?」


「あー確かにフォロワー多いし、フレンド枠もすくに埋まるよな」


「高校生プレイヤーの集まりではちょっと騒がれるんすよ」


フレンド申請もなかなかしない。申請が来たら受け入れるという方針なので、フレンド枠はいつも空いている。
そんな私からすると、フレンドになりたいという人が多くて、自分の呟きに興味があったり、話したいと思ってくれる人が多いのって充分すごいことだと思う。
それも目に見える形の結果、だと思う。


話しているうちに目の疲れがとれてきた。
またスマホを手に取り、ゲームを進める。


うっすら黄色がかった空と空腹感に気付いた時、思わず画面の時計を見て驚いた。


「もう一時半……」


私が呟くと、みんな視線を上げる。


「ほんまや。お昼ご飯食べるの忘れてた」


大和さんがはにかみながら髪をかきあげる。


「私はお弁当を持ってきたけど……」


「おいらも」


黒澤さんと河芹さんは持ってきているらしい。
大和さんは思いっきりお昼は家で食べるつもりだった……と言って小さな笑い声をこぼした。


お昼を持ってきた二人は残り、私たちは帰ることにした。
同じ一時でも冬は夕方の気配を感じる。少し落ちた太陽の黄色が見え始めたと思えば、あっという間に橙色が侵食していく。


お昼ご飯を済ませ、徐々に声が戻ってきた広場。


「学校に行けるのはいいんやけどさ、あの二人と別れるのは寂しいな」


教室での優しい雰囲気の中過ごしていた大和さんが、男子の下品な会話と大人数特有の息苦しさに突入していかなければいけないことを考えると不安になった。


「でもいじめる人とかはいないって聞いたし、新しい友達ができることにも期待しようと思って」


寂しさの中に、希望と勇気がほんのり光る目だった。