名前からして私立だ。それにしても、扶桑花なんて高校聞いたことがない。もしかして、大学だったりして。
大和さん、飛び級してる……?なんて突飛な考えが浮かんできたけど、普通に考えれば大学の付属高校だろう。


警備員がいないというのに門は開きっぱなしだ。防犯は大丈夫?
大和さんは容赦なく入っていくけど、私みたいな部外者が入って怒られないかな。



大和さんが入っていったのに、ここで足を止める訳にはいかず、上手いこと言って高校に告げ口されないようにだけはしよう、と入っていった。
門を抜ければうちと同じようにちょっとした広場になっている。そこで小学生らしい子が遊んでいるけど、私にちょっと目をくれただけであとはスルーした。


いいんだ。ていうか高校とかの敷地内に小学生が遊んでるとかうちより自由だ。
それより昇降口が見当たらない。いや、外部からだったら玄関から入るのか?


きょろきょろと見回していると、大和さんが左に曲がったので、慌ててそれに合わせる。
黒く掘られた字で玄関とあり、大和さんは灰色の鈍く光る取っ手を引く。
そこで脱いだ靴とスリッパを入れ替えた。


大和さんは談笑している声が漏れてくる方に行き、窓をノックした。
上を見ると事務室と書かれていた。


「大和です。他の学校から連れてきました」


窓の向こうで誰かが席を立った。
中から出てきたのは普通っぽい人。服も着慣れた私服という感じの、ゆったりしたワンピースだった。
事務員さんってこんな感じだったっけ。


「大和さんから呼ばれて……お邪魔します」


「どうぞどうぞ。ごゆっくり〜」


笑顔で迎え入れてくれた。なんか、フレンドリーだね。
学校ってこんなゆるい感じだったっけ、と脱力しながらも歓迎してくれるのは嬉しかった。


階段を上り、ガラガラとドアを開けると、私が見たことのない大和さんがいた。