聞き流していたけど、男子もいじめてくるようなやつはいないという言葉で失笑しかけた。


人の顔を恥じることなく笑うようなやつらが、虫が怖いからと女子の方に追い立てるようなやつらが。
早いこと真実を教えてあげないと。きっと落胆するだろうな。


けどそんなことを言えば学校に行くのを怖がらせてしまうかもしれない。
登校するようになればいずれは知ることになるんだ。


先生から見たクラスの説明を聞いていると、放送が入った。


担任の先生を職員室に呼び出している。


「悪い、すぐに戻るから待っててほしい」


慌てて教室を出た先生の背中が消えていく。
すると大和さんが息をついた。


「久しぶりの学校って疲れるわ。授業も何もないのに」


学校というものは人の声の塊だし、ただ過ごすだけで疲れるというのもわかる。深く頷いた。


「あっ、すみません。聞こえちゃいました?



「まあ……。別に気にしなくていいですよ」


敬語という飾りのない本音を聞けた。同じように思っていることがある、と知れただけで安心した。


「もしかしたらこのクラスのメンバーになるかもしれないんです。ご迷惑をおかけするかもしれませんが……よろしくお願いします」


また縮こまるかのような敬語になり、声も先細っていく。


「ちょうど女子が奇数だったから来てくれると嬉しい。うちのクラスの女子、困った時はお互い様って感じだから、肩の力抜いていいよ」


男子は迷惑をかけようがかけまいが笑ってくるから気にしなくていいし、と裏で付け足しながら、手を上下させた。


「私手に負えないくらいどんくさいのですが、長続きするよう頑張ります……」


私の言葉も安心するには至らなかったらしい。


「まあ過ごしてみればわかるよ。この学校のルーズさとか」


背もたれの後ろで手を組みながら、天井を見上げる。耳鳴りが聞こえそうなほど静かな教室に机が軋む音がした。


成績のゆるさは偏差値が示している。先生も諦めているのか、授業中にスープを飲んでも軽く注意するくらいだ。
しかしこんなルーズでも求人は余るほどくる。なぜか企業からの評判はいいらしい。


県内の求人が増えているとはいえ、ミステリーだ。この謎を解ければ、この国の仕事の問題を解決する糸口になるんじゃないか。私は無理だから閃きと人間観察に自信がある人はどうぞ。