作品を読んで思ったことを書けばいいんだ。えっと、まず……どの人も好きですが、高木くんがお気に入りで……。


誤字は恥ずかしいから慎重に入力していく。
間違えて途中で送信してしまったら……とか、失敗を想像してしまう。


それで、好きな場面はあそこだよね。
次はすぐに読み終えることができました……って、これはダメかも！
すぐに読み終えた、は内容が薄かったのか？と思われるかもしれない。


どう言えばいいのか……読んでいるときはポンポン出てきた感想を言葉にすることができない。


降りる駅のアナウンスが聞こえる。
結局感想が書けないまま、ホームの黄色い線を踏み越えていた。


昨日とは打って変わって広がる青空。
明日は休みだし、今日も二時間までだと言い聞かせながら歩く。


あの書きかけのコメントが気がかりで仕方ない。
学校に着いてからゆっくり書くとして、今は考えよう。
すぐに読み終えたと言っても、量が少ないからとかじゃなくて、なんというか躓くところがなく、読みやすい文と構成だったから……、そうか、これだ！


読みやすい文と構成で、すいすい読むことができました。
しっくりくる感想を思いつくと気分が高揚する。これであとは打ち込むだけだ。


早く感想を書きたいと思うほどに、早歩きさえも遅く感じて、足がもつれそうになる。
校門をくぐり、下駄箱に靴を放り込む。


空いている階段をぐいぐい上っていき、ゴールである自分の席に着いた。
これで書ける。手袋を取り、感想を打ち込んだ。


あれ？どう書こうと思ってたんだっけ？読むことができました、の前に何かがついていた気がするんだけど。
ぐいぐい、はまた違う気がするし……。


書けると思ったのに……。高揚した気分がどんどん冷めて、焦りに変わっていく。
人差し指を画面にぶつからないすれすれのところで揺らす。


えっと……すいすい！
思い出した途端急上昇した。打ち終え、誤字がないか確認する。そして勇気を出して送信した。


読んでくださるといいな。
感想でも丁寧に書く人もいる中、私のは短いし大したことを言っていない。けどこれでも頑張って書いた。


朝から一息つき、この教室内で鼓動が速まっているのなんて私くらいなもんだよね……と、少し恥ずかしくなった。