私が部屋にこもっていると、机にお皿が並べられる音がする。
もうすぐ呼ばれるな。これが終わったら行こうと思いながら、人差し指を動かす。


ゲームが終わって画面を閉じると、お母さんが私たちを呼んだ。
スマホを床に置いて、電気を消してから部屋を出る。


白い皿の上で湯気を立てる酢豚、ごまのドレッシングがかかったサラダ、マグカップに入ったコーンスープ。
共通点は和食じゃないことだけと言ってもいいくらいバラバラなメニュー。でも一つ一つは美味しいから別にいい。


手を合わせていただきますというタイミングもバラバラだ。私が箸を取った頃にはもう、お父さんが酢豚を食べていた。


酢豚と共に、柔らかいを通り越して若干べたべたしているご飯も減っていく。
お母さんは柔らかめが好きだけど、私は歯ごたえがある方が好き。特にお弁当の時。


でも言うほどのことでもないし、べたべたのご飯を食べ続けている。


「たっちゃん、部活は何時まであるの?」


「五時まで」


「そういえば春休みに大会があったよね。どう?」


「無理だろ。三年いなくなったし、レギュラーの二人は無能だし。栄応にも負けるくらいだからな……」


「栄応ってガリ勉多いイメージなんだけどそこにも負けるのか……。私立で金かけてそれはきついね」


「正味うちにはあまり金かけてない。部費もどうでもいいことで消えるし」


辰也は目指していた公立の高校に落ちて、すべり止めで受けた私立に通っている。私のとこよりは偏差値が高い。


進学クラスになると真面目ちゃんしかいないらしい。進学クラスは部活とバイトが禁止で、七時間目もあるらしい。うちの生徒に進学クラスの授業を受けさせたら一分ともたないだろう。


普通クラスの辰也は部活に励んでいる。
ラクロス部で、部員が少ないから二年生になったら確実にレギュラーになれる。
運動部はプロテインが貰えるらしく、それを飲む辰也の腕と脚は、入学当初と比べてがっしりしてきた。