自分の部屋は居心地が良くない。けど、居間はもっと嫌だ。
また扉が開く音がして、玄関を革靴の踵が叩く。
「ただいまー」
「おかえりー」
お母さんが何かを煮込んだまま返す。
居間に移動しようかと思ったけど、やっぱり無理だ。
私はお父さんが苦手だ。いや、苦手というより、わからないし怖い。
子供の時もお母さんにくっついてたから、お父さんとはあまり話していない。
それが中学になると悪化して、得体が知れなくて怖い存在になった。
得体が知れないなんて家族に使う言葉じゃない。けど、本当にお父さんのことがわからない。
好きな食べ物と血液型くらいは覚えているけど、今何が好きなのかはわからない。
アプリのIDも辰也とお父さんとは交換していないから連絡もできない。
辰也は交換したくないだろうから別にいいとして、今更お父さんに交換しようなんて言えない。
誕生日も覚えているけど、何がいいか悩んでいるうちにケーキを食べて一日が過ぎていた。
忘れているわけじゃない。六歳の時の下手な絵でも喜んでくれたお父さんに、変なものをあげられないと思っただけ。
昔のあまり考えずに渡せた自分がちょっと羨ましい。
また扉が開く音がして、玄関を革靴の踵が叩く。
「ただいまー」
「おかえりー」
お母さんが何かを煮込んだまま返す。
居間に移動しようかと思ったけど、やっぱり無理だ。
私はお父さんが苦手だ。いや、苦手というより、わからないし怖い。
子供の時もお母さんにくっついてたから、お父さんとはあまり話していない。
それが中学になると悪化して、得体が知れなくて怖い存在になった。
得体が知れないなんて家族に使う言葉じゃない。けど、本当にお父さんのことがわからない。
好きな食べ物と血液型くらいは覚えているけど、今何が好きなのかはわからない。
アプリのIDも辰也とお父さんとは交換していないから連絡もできない。
辰也は交換したくないだろうから別にいいとして、今更お父さんに交換しようなんて言えない。
誕生日も覚えているけど、何がいいか悩んでいるうちにケーキを食べて一日が過ぎていた。
忘れているわけじゃない。六歳の時の下手な絵でも喜んでくれたお父さんに、変なものをあげられないと思っただけ。
昔のあまり考えずに渡せた自分がちょっと羨ましい。