満員電車の中、伶菜さんのところに感想が集まるのを見て喜んでいた。
駅はまた生徒や働く人でごった返す。


「おはよう!」


後ろから声をかけられ肩を跳ね上がらせる。
そして声の主に振り向きながら、おはようと言った。


「よかったー。この時間なら間に合うんやな」


「うん。余裕余裕。今日は私も早めに来たから、もうちょっとゆっくりでもいいくらい」


大和さんは田舎のそれなりに大きい駅を見回す。


「和菓子屋さんとかあるんやな」


「見に行ってみる?」


「うん」


見に行ったはいいもののシャッターが閉まっている。
しかし貼り付けられたポスターに目を奪われた。


「桜ういろう……。帰りに買おうかな」


「私も気になる」


「じゃあ帰りに一緒に寄ろっか」


放課後の予定を作ってから和菓子屋さんから去り、通学路も一緒に歩いていく。
漫画の話をしていると、しいって恋したことある?と聞かれた。
これまた答えにくい質問をと思ったけど、乙女にならいいかと話す。


「初恋は実らないって言葉が嫌で。なんか抗いたかったんだけど、この通り。やきもち焼いたりもしたし、なんかかっこ悪い感じになっちゃったよ」


私が肩を竦めると、乙女は腕を組んで空を見上げる。


「別に人を貶めようとするタイプのやきもちじゃないしいいじゃん。かっこ悪くないで。それにさ、初恋にも色々あるやん。今度の、初めて叶えたいと思える恋は上手くいくんじゃね?」


乙女の自信ありげな笑みと発想が、私の敗北感を打ち消してくれた。


「そうだね。今度は大丈夫」