マジか!!!
私はバッと菜緒の方を見た。
菜緒は全く私に気がついていない。
借りようにも、もう試験は始まろうとしている。
何でもっと早く気がつかなかったの!?
私の大バカ!!!!!!
試験官の先生に言うにも、こんな間抜けなこと恥ずかしくて言えない。
きっと一気に目立つ!
しかし、鉛筆と消しゴムがなければ何も出来ない。
どうしようもない。
意を決して慌てながら、隣の席に座る男の子に声を掛けた。
「あのっ…すいません…消しゴムと鉛筆を家に忘れちゃって…。多めに持ってたら貸してもらえませんか?」
「ああ…はい」
そう言って、男の子は自分のふでばこから鉛筆と消しゴムを取り出し、私に渡してくれた。
「ん」
「あ、ありが…」
男の子の顔を見てお礼を言おうとすると目が合い、その瞬間突然心臓がドクンっ!と音を立て響いた。
え…
右手で頬杖をつき、まつ毛が長く二重の綺麗な目と、鼻筋の通った横顔を向け、私を見ていた。
カ…カッコいい…
髪は黒髪で、アイドル系のヘアースタイル。
おまけに消しゴムと鉛筆を持つ左手は骨ばっていて、全てが完全に私のドストライクだった。
「……?何やってんの?早く受け取んなよ」
その言葉で固まっていた私は、は!?と我に帰った。
「あ…!す、すいません!ありがとうございます!」
両手を出し、カッコいい男の子から鉛筆と消しゴムを受け取った。
少し手が触れ、一瞬で手のひらは汗ばんでしまった。