椅子を引いて座るなり、私は最初の科目の数学の参考書を鞄の中から取り出した。




他の学校の受験生たちも続々と教室に入り、それぞれ参考書を取り出し、私と同じように最後の見直しをしていた。




私は緊張していた。




「ふぅ…」


と、息を吐き呼吸を整える。





すると時間になったのか、ガラッと教室の扉が開き、試験官の先生が入ってきた。




腕にはテスト用紙が入った大きくて重そうな封筒が抱えられている。





「はい!ではみなさん、席について!参考書を見ている人はしまって下さい。用紙を配ります。」





私は指示に従って鞄に参考書をしまい、ふでばこを出そうとした。




…あれ?





あるはずのふでばこが…ない。





え?




え!?




頭の中は一瞬でパニックになり、冷や汗がダラダラと出てきた。




どうやら、家に忘れてきてしまったようだ。