電車の中で話題のミュージカル映画の曲を聞きながら買ったばかりの小説にいつも以上に集中する。
なぜならば、今日の電車の中はいつも以上にカップルが多いからだ。

哲雄 なんでこんなに今日はカップルが多いんだ!これは俺に対するあてつけか?クリスマスでも花火大会があるわけでもないのに…たかだか連休が重なってるだけなのに。にしても羨ましい…
と、思ってると1人の女性に目がいく。

俺の名前は大岩哲雄。職業は何処にでもいるような普通のサラリーマン。趣味は読書、映画観賞に後は家で一日中オンラインゲームの世界で現実逃避をする。
最近では、ジムにも通い始めた。

目の前に座ってるカップルの女と目が合う。女が目をそらす…すると小声で坊主頭の厳つい隣の男に何かを話してる。

坊主頭の厳つい男がこっちに近づいてくる…立ち上がると思いのほか自分の体格よりもはるかに横に太くゴツい…そして、低い声で上からこれでもかと言わんばかりに睨みつけ…

男 おい、さっきから何見てんだよ?
哲雄 別に見てませんけど…
男 あーん?さっきから俺の女のことずっと見てただろって!!
男の怒声が車内に響き渡る。他の乗客は何事かと全視線がこちらに集中する。
降りたい駅は2駅先の駅だが、このままだと面倒な事になりそうなので慌てて逃げるように停車した駅で降りた。

哲雄 てか、俺が見てたのはあんな厚化粧の女じゃなくて隣の色白の女の人を見てたのにな。なんか凄く透明感があって綺麗だったな。あーあ、今のが最終だからもう来ないよなぁ。歩いて帰るか。

諦めて地下から改札へ上がる階段へと向おうと振り返ると、1人の女性が立っていた。よく見るとさっき自分が見とれていた女性だった。
その女性が心配そうな顔で声を掛けてきた。

女 大丈夫ですか?
哲雄 あっ、はい…
すると、さっきとは表情が変わって屈託のない笑顔で答えた。
その笑顔に一瞬ドキッてした…

女 じゃあ、良かったです。
哲雄 あの…もしかして僕を心配して降りてきてくれたんですか?

女 はい!なんか怖い人だったので、ちょっと気になったので…
哲雄 そうですか、ご心配ありがとうございます!もう大丈夫なんで!
と言いながら立ち去ろうとする哲雄。

女 あの!覚えてないですか?
不意に背中越しに予想外の言葉飛んでき、思わず振り返る哲雄。
哲雄 えっ?
振り返るとそこには誰もいなくなっていた。
我に返った…まただ、いつもの癖で綺麗な女性を見るとつい妄想でありえないドラマのような出会いを作ってしまう。


哲雄 俺にもあんな女性と偶然に出会えたらな…なんて都合のいいあるわけないか…

独り言ブツブツ言いながら改札を出て家まで徒歩20分の距離を歩く。

家の鍵を開けて部屋に入り1DK6畳の洋室のベットに倒れこむ…真っ暗な天井見ながら呟く哲雄。

哲雄 はぁ、彼女が欲しい!