「でも、真君の株が・・・人気がなくなっちゃったのかな?」
「人気?
あぁ~・・・でも僕そんなの興味がないなぁ」
左様ですか・・・
「だってなっちゃんに愛されていればそれでいいもん」
なんて・・・なんて・・・
「なんて可愛いの・・・?」
「へ?」
間抜けた声を発した真君は私の顔を拗ねたように見つめる。
「可愛いって言ったの?」
「うん・・・ごめん」
「ヤダ。許さない」
え~・・・そんなぁ~・・・
「男はね、可愛いなんて言われても嬉しくないよ?」
「じゃあ・・・カッコイイ?」
「そんな疑問形でいわれても嬉しくないやい!!」
「じゃあ、どうすれば―――」
「じゃあ、キス、してよ!!」
・・・。
い、今、なんて言ったんだろう・・・
「キ・・・ス・・・?」
「そう。なっちゃんから僕に♪
そしたら、許してあげる」
なんて横暴な・・・
「ほらほら。早く」
完全にイタズラ顔の真君。
ちょっと、遊ばれているような気が―――
「ねぇ、まだ~?」
しかも、尻尾を思い切り振っているような気が・・・
もう、こうなったら!!
私は、そっと真君の唇に重ねた。
その日の放課後、私と真君は大さんの喫茶店に入った。
「ま~さ~る♥
いつものね~」
「お前の金でな」
「何言ってるの?大の奢りに決まってるじゃん。
バカなの?」
「バカはてめぇだろうが!!」
相変わらず、口喧嘩は絶えなかった。
「まぁまぁ・・・」
「やめなさい。
バカ犬一匹とバカゴリラ一匹に構っていたらこっちまでバカがうつるわよ」
朱莉さんも店の中にいたようで―――
「誰が、バカ犬だって・・・?」
「誰がバカゴリラだよ・・・?」
「さぁ?誰のことかしら。
少なくともここにいる人の中では私となつきじゃないのは予想ついたんじゃない?」
なんと大人っぽくドスグロイことを・・・?
「朱莉・・・」
「さぁ、なつき。
あそこのクソ親父2人をほっといてケーキでも食べましょ?
あなたはシフォンケーキだったかしら?」
「はい」
「ってなわけだから大。
あんたの給料から差し引いてちょうだい」
「てめぇが一番バカだろ!!」
大さんの怒号が店いっぱいに広がったが、私はその時間が楽しかった。
翌日、急に担任の先生が教室に入ってきた。
どうしたのだろうか・・・?
「みんなにいい知らせがある。
今日からこのクラスの仲間が入る」
つまり、転校生がきたのだ。
こんな時期に・・・
入れと担任がいうと、扉が開いた。
入ってきたのは顔のよく似た男の子と女の子。
「京都からきた、神沢涙(かんざわ るい)と神沢奈穂(かんざわ なほ)だ
みんな仲良くするように。
じゃあ、二人から自己紹介を」
と促され、まずは男の子の方から自己紹介が始まった。
「はじめまして。俺は神沢涙です。どうぞよろしくおねがいします」
「はじめましてっ。神沢奈穂で~す。
仲ようしてください♥」
なかなかの関西弁で自己紹介する二人。
神沢君の方は落ち着いていて、物静かな感じ。
神沢さんの方はすごく明るくて・・・なんというか・・・真君に似たような性格・・・
明るく子犬の時の・・・
そして、席は、神沢君は私の隣。
神沢さんは真君の隣に座った。
「よろしく。お前、名前は?」
「あ、楢井なつき、です」
「なつき、かぁ・・・可愛い名だな」
「あ、ありがとう・・・」
「俺、もっとなつきのこと知りたいんだけど・・・」
何か、いきなり呼び捨てだし、馴れ馴れしすぎない?
もしかして、カモられてる?
心配になって思わず真君を見る。
「真~♥久しぶり~
会いたかった~」
「うん、そうなんだ~♪
僕は会いたくもなかったな~♥」
「え~、ひど~い!!
そんなこというの~?私達、結婚する仲なのに~」
!!
な、何ですと!?
しかし、真君はそんなことものともせず・・・
「え~、いつの話してるの?
全っっ然面白くない冗談はやめてよ~♪
大迷惑なんだからさ~(*´▽`*)」
超笑顔で拒絶する。
「え~、うそや~」
「ほんとだよ~♪
僕にはもう心に決めた人がいるんだから(o^―^o)ニコ」
「・・・それ、誰やねん?」
急に神沢さんの声のトーンが一気に下がった。
「ふふふ。ひ・み・つ。
でもまぁ、すぐに分かるよ」
「そんなの朱莉さんが―――」
「あいつはもうとっくに承認済み♥」
「わ、私が―――」
「おーい、神沢奈穂。
授業、始まってるぞ」
と、数学の先生に注意されて、やっと授業に集中する。
でも、真君の言葉がまだ耳に残っている。
やっぱり真君は強いなぁ・・・
そのまま、時間が過ぎあっと言う間に放課後になった。
「なっちゃ~ん、帰ろう♪」
「うん!」
私は荷支度を整え、真君に駆け寄った。
校門をすぎたところで、真君が急に私の左手をとって繋いだ。
恋人繋ぎ。
急に心臓の鼓動が急上昇した。
「一回してみたかったんだ。嫌だった?」
「ううん。すごく嬉しい」
「そう?よかった」
とニカッと笑う彼の表情もすごく嬉しそうだ。
ずっとそのまま離したくないな・・・
心の中で少しだけわがままを言った。
しかし―――
「あーー!!真の言ってた人ってもしかしてこの子なん?」
と神沢さんが間に入った。
後ろには神沢君が歩いている。
「奈穂・・・お前なぁ・・・」
真君は私たちの邪魔をしたことに機嫌が悪く、軽く神沢さんを睨む。
「何で!?
確か、この子って涙と喋ってた子やんな!?」
まぁ、確かに、挨拶はしたかな?
「たかが、初めまして~とかよろしく~とかいう挨拶だろ?」
「違うよ!だってこの子涙に『ありがとう』って言っててんで!?
なんか、仲睦まじい様子やったもん!!」
いや、仲睦まじいっていう程じゃないと思うけどなぁ・・・
「・・・」
ギロリと神沢さんを睨む真君。
そのオーラからは不穏な予感がした。
「・・・奈穂。何がしたい?」
「え・・・?」
「さっきから俺の大事ななつきを侮辱しすぎじゃないのか?
大体、そんな小さいことで俺らは何ともねぇよ。勘違いすんな」
ま、真君・・・
彼の言葉に・・・行動に改めて惚れ直す。
「な、何やねん・・・
真は私の気持ちを弄んでるっていうんか!?
こんなにもあんたのこと想ってんのに・・・
あんたが私を組織から追い出されてから、あんたのこと忘れたことなんて一度もなかってんで!?
私、あんたのことが好きやのに・・・!!」
神沢さんの目から涙が流れていた。