「そうですね。好きです。でも、好きだと言ったら先生は私を拒否するんでしょ、?」


何でも言うことを聞くおもちゃが欲しいだけの、子供みたいなこの人が憎くてたまらない。

この好きはどうしたら消えてくれるのだろう。

と、その時だった。

唐突に、右手の薬指にはまっていたソレを外した彼は、それを私の左手の薬指に通した。

彼の指にはまっていた指輪が、私の指に不恰好な形でぶら下がる。

あまりにもサイズ感の合わないその指輪を見て、はてなを浮かべていると、


「俺から指輪を受け取る気はあるか?」

「え」


自分の耳を疑ってしまいそうになるような言葉が、彼の口から飛び出した。


「どうなんだ、?」

「……あります」


そう答えるのが精一杯で、思わず頰を涙が伝う。

そんな私をクツリと笑った先生が、「”ずっと待った甲斐があったな”」と私の耳元で囁いた。






楔と時効 fin.