私には、彼の言わんとする事が何なのかこの時点では分かっていなかった。

ただこんな状況にもかかわらず、やっぱりの彼の事は嫌いになれそうにない。


「君は寂しいんじゃないか?」


「——寂しい、?」


その言葉は、確かに今の私を表すのにぴったりな表現だった。

田舎の両親や友人と離れ、住み慣れない土地での一人暮らしは、それまでそこにあって当たり前だと思っていたもの全てが欠落していた。

当たり前のことだけど、自分以外の住人のいない部屋に帰って来た所で、部屋の灯りなどついているはずもなく、それ所か静まり返った部屋の中には、「ただいま」の声に対する「おかえりなさい」のやまびこも存在しない。