ニヤリと笑うその人は、悪魔のような声を上から降らせる。


「九州の田舎からわざわざ親元離れて、こんな男を追いかけて来たのにな」


「どうして、それを……、」


「誰が聞いてるとも知れないあんな飲み会の席で、不用心だなホント」


「わ、私は純粋に先生の思考が……、」


好きだと言いかけた瞬間に、その言葉を掻っ攫う様に掬い上げる桜庭准教授。


「俺の思考が好きだと言ったな?」


「……はい」


「じゃあ、今俺が何を考え、何を望んで居るのか分かるか、?」


桜庭准教授の考える事、?


「……分かりません、」


「君は非常に俺にとって都合の良い人間だ」


「——都合の良い、?」


「ああ。俺たちは互いのメリットを十分共有し合える様に思うが、どうだろう」