私にしてみれば、そんなモノは大して重要ではないのだ。

彼の一番の魅力はそこじゃないと声を大にして言いたい。

何たって、私が好きなのは彼の”思考”そのものなのだから。


「……せ、先生の論文を拝見していて、ずっとお聞きしたかった事があるんですっ‼︎」


「ほう、」


それも事実である事は確かだが、何故かこの時の私は彼を引き留める事ばかりを考えていた。

どうしたら彼が、この場に留まり私の部屋へと来てくれるか。

彼の思考をもっと堪能したい。

他の子が入り込めていない奥の奥まで、彼の思考の内側を紐解きたい。

そんな事ばかりを考えていたからかもしれない。

私はこの時点で既に、この男の策にまんまと嵌められていたらしい。