タクシードライバーに行き先を告げる様に促され、私は自宅の住所を口早に告げた。

車内では、彼の質問に応える形で会話のラリーが続く。

彼との会話は、知的な面白みに富んでいた。

すると自宅マンションの下にタクシーが止まる直前、楽しいこの会話を終わらせたくないと言う気持ちが勝り、自ら口を開いていた。


「あの、……もし良ければお茶でも飲んで行ってください」


「君は、俺を些か買いかぶり過ぎな節がある」


その忠告はやんわりと私の申し出を辞退している様で居て、微かに棘があったように感じた。

ただ誤解して欲しくないのは、私は他の女の子の様に、彼の容姿だとか地位だとかには一切興味がない。