「……君はもう帰るのか?」


怪訝な様子でこちらを見つめる彼は、どうして私がここに居るのかと問うているらしい。


「はい。大人数の飲みの席は苦手で、抜け出しちゃいました」


「そうか」


普段一対一で会話する事のない相手との会話は、かなり緊張する。

何だかんだ先程とは打って変わって、酔いが覚めた気さえしてきた。

彼の疑問が解けた所で、彼の方から立ち去ってくれないかと淡い期待を抱く。

何か失態をする前に、当たり障りのない会話で終わりたい。

仮にも彼は憧れの相手なのだから。

つまらない奴だと思われたくないと言う変なプライドが、重たい口をさらに重たくする。

だけど、そこで彼の方から予想外の話題を振られた。