もしも、あの時進路に悩んでいなかったら。

もしも、あの時彼の著書が出版されていなかったら。

私と彼の歩む道は、一切交わる事なく進んでいたのだろう。

そうで無ければ今頃は、ここではない他大学を受験し、平凡な大学生活を送っていたのかもしれない。

あの時、偶然立ち寄った書店で、何となく立ち読みしたあの本が、私の人生を大きく——狂わせたんだ。

初めの頃は桜庭准教授のゼミ生として、彼に認知されるようになってからも、私の日常はなんら異常なんてなかった。

自体が急展開を見せたのは、ゼミメンバーで開催した飲み会が原因だった。