「ちょっ、本当になにやってるんですか!!退いてください!!」


「馬鹿か、お前」


「馬鹿じゃないです!凡人です!!」


「どっちも変わらんだろう」


こんな事を素で言い放てるのは、目の前の男が若き天才と呼ばれるが所以だろうか。


「時間切れ。俺は待たされるのが心底嫌いだ」


「知りませんし、待って欲しいなんて一言もっ、ンッ……、んんッ、」


キスがこれ程激しいものだと、この男に出会うまで知らなかった。

まさに貪るようにこの男はキスを降らす。

と言うよりも、口内という口内を犯しにかかる。

おそらくこの男は分かってやってるんだ。

こんなキスをされてしまえば、途端に私がおとなしく言う事を聞いてしまう事を。