私は自分の降りる駅に降た。

メールが鳴る。

ーいつでも言ってね。甘えていいんだからさ!!-

私、きっと幸せものなんだと思う。
こんな風にメールくれる男がいてさ。

この人じゃダメなの?
私が 付き合って って言ったら きっとOKしてくれる。
とても優しいいい人じゃない。
あんな舞台バカに比べたら、全然・・・。

空の雲はやっぱり少し薄くなっていた。
月の光がぼんやり浮かんでいる。

あいつはさ、私のことなんか ぼんやりとしか見てなくって、私のことなんか何も考えてなくって。

ーあ・・なんか・・変なこと言っちゃったかな??-

彼氏に一番近い存在 の男がメールしてくる。

携帯を閉じようと思った瞬間。
なんとなく、携帯のスケジュール機能を開いた。

明日のところに 舞台 って書いてある。

明日・・あいつ・・舞台なんだ・・。
なんで書いておいたんだろ・・私・・。
もう 行かないって決めたのに。

改札から少し歩いて 止まった。

風がいっぱい吹いた。
その瞬間。
雲が一気に無くなったかのように。

月が大きな顔を出した。
星を連れて。



私は 優しさが欲しいんじゃない。
甘えさせてくれる人が欲しいんじゃない。

私は、欲しいものがない。

気付いた。

欲しいものがないよ 君以外ないよ ごめんね。




彼氏に一番近い人じゃなく、
彼氏に一番遠い

あいつにメールした。

ー明日舞台だよね。行くよー


         「Chara Kiss を聴きながら。」