私は急に泣きたくなった。
それも逃げたかった。
泣きたいけど、泣きたくなかった。
だから 走って帰った。
駅まで走って 走って 走って 走って・・・・・・・・。

息切れをしながら 適当に来た電車に乗った。

車内で濡れて息切れをしている私の姿をみんな観ていた。

きっと 急な雨にやられて、走って来たんだ って思っているだろう。

違う。

私は雨から逃げたんじゃない。
雨は堂々と受け止めた。
むしろ もっと受けたかった。

でも、曇りに変わって泣きたくなって、それで私は走って逃げた。

車内は比較的すいていた、だから座れたけど、濡れてるし・・何となく座りたくなかったし・・・。
私はドアの側にもたれかかるように立っていた。

息切れが落ち着いてきたころ、携帯が振るえだした。
メール。
観ると先日友人から紹介してもらった 今の私の彼氏に近い存在であろう 男の子からだった。

ー雨、すごかったね。濡れなかった?心配だよー

濡れたよ。業と。
そんなことも言えず・・。

ー大丈夫だよ。ありがとうー

と返信した。

また、泣きたくなった。
ドアのガラス越しから外を見た。

正確には空を観た。

雲がさっきより薄くなっているような気がした。
あくまでも 気 で現実はどうかわからない。

ー大丈夫だったなら良かったよ。風邪ひいちゃうといけないからね。でも、風邪ひいたら俺が看病してあげるけどさ(笑)-

私は返事しないまま、携帯を閉じた。

あいつだったらなんて送ってくるかな。

いや・・・自分のことばっかりの人だから、私の心配なんかしない。
つまり、そういったメールはくれない。

メールももう何ヶ月もしていない。
それでも、あいつは何も言ってこない。

舞台の告知さえも。

私はファンとしてもダメってことなのかもね。

そう思ったら もっともっと泣きたくなった。

誤魔化すように、さっきのメールに返事を打ち始めた。

ー今、電車の中だよ。風邪引いたら看病頼むよ(笑)-

(笑)なんか入れても 全然 笑ってないけどね。

暗闇の中、ひたすら電車は走っては止まりを繰り返す。
たまに人を乗せたり、降ろしたりしながら・・・。