私の好きな人は本当の姿を見せてくれない。
いつも笑顔で口調も丁寧だし、

ってコンビニの店員さんなんだけどね。

私は彼に逢った瞬間。一気に恋に落ちた。

本当の君のことは知らない。
コンビニのおにーさん。ってことしか知らない。

まるで私、中学生みたい。
もういい年なのに。
自分で自分がおかしくて恥ずかしくって。

「今日は遅かったですね。残業?」

初めて声をかけられた。

私はサイフを落としそうになった。

「あ・・は・はい・・」
「大変ですね。僕なんかフリーターってやつだから会社に縛られてないし(笑)」
「・・・あ・・はー・・」
「あ・・すみません。なんか・・。えーとお会計、1397円です」

私は慌ててサイフをあさった。

「お客さんいないし、慌てないでいいですよ」
笑顔で彼に言われ余計に慌ててしまう。

私はやっとの思いでサイフから2000円を出した。

おつりをくれたとき一瞬。彼の手が私の手に触れた。

「手。冷たいね。寒いから風邪ひかないようにね」

私はすごく恥ずかしくって走って帰った。


彼の手が触れた部分が切れそうなくらい ジンジン する。

彼のことを知りたい。
勝手に運命 みたいに感じてる私。
バカ。

きっと私以外の人にだって優しい笑顔なんだよ。
だって、お客さんは大事だもん。
私にだけじゃない。
私にだけじゃ・・・。

ジンジン 痛いのは 触れた部分じゃなく、心だった。