私みたいな田舎しか知らない人間が振り回してもいい相手じゃない。
だから、何も言わずに見送らないと___。


見送る…と考えた途端、さーっと血の気が引いていく。
私はまた、人を見送る立場になるのか……。


(また人と別れるの……この人は生きてるのに、手を離さないといけないの……?)


そう思うと無性に悲しくなってしまう。
やっと明日を信じて歩き出せそうだなと思い始めたのに、また……。



「愛花?」


名前呼ぶ彼が私に触れる。
親指の腹で頬を擦り、「泣くなよ」と声をかけてきた。


「え…」


その声に驚いて目をばたつかせた。
パタタ…と手の甲に水が落ちてきて、ようやく泣いてるんだと気づいた。


彼は涙で濡れた目尻を擦る。
その手の感触を感じたまま、私はぎゅっと手を握りしめた。


「俺がいなくなったら、この涙を拭うのは彼奴になるのかな…」


悔しそうな声で囁くのが聞こえ、「とんでもない!」と声を張り上げそうになる。
でも、そう言うと彼のことを引き止めてしまいそうで、それはできないと唇までも噛みしめた。