「そ、そうだよ、瑠夏ちゃん。変なこと聞かないでー!」
奥に隠した気持ちを悟られたくなくて、必死に笑って冗談っぽく返す。
「夏目は俺のことなんか、これっぽっちもタイプじゃないのにな。まぁ、俺もだけど」
——グサッ
水野君の何気ない本音が胸に突き刺さって、ズキズキと痛む。わかってるよ、わかってたよ。
瑠夏ちゃんに疑われるのは嫌だもんね。誤解されたくないもんね。
「夏目のタイプは優しくて笑顔が素敵で? 内面のよさが顔に滲み出てるようなやつ、だったっけ? ま、俺とは正反対だよな」
ずいぶん前に言ったこと、よく覚えてるな。
そうだよ、私のタイプは水野君とは正反対なんだよ。それなのに……。どうして水野君のことなんか好きになっちゃったんだろう。
どうして、こんなにも涙が出そうなんだろう。
胸がヒリヒリして苦しい。ズキズキして痛い。
『俺を好きになっても無意味だから』
『俺はこれっぽっちもなんとも思ってないから』
そう言われているような気がして、告白してもいないのに振られたあとのような虚しさが残る。
唇を噛みしめて、泣かないように歯を食いしばった。
「そうだ、これ。もう冷めたかもな。ほら」
差し出されたのは白いプラスチックの容器。たこ焼きのいい匂いが鼻をかすめる。食べる気になれないけど、せっかく買ってきてくれたのに受け取らないわけにはいかない。