てっきり私は水野君だと思っていた。二人は両想いなんだって、そう思っていた。

「その相手っていうのが、春ちゃんの親友なんだけど……サッカーやってて、カッコいいんだ」

「サッカー? そういえば、水野君も……」

サッカーをしてたんだっけ。

クラブユースのチームに入っていたんだよね。

もう二度とやるつもりはないって、佐々木君に言ってたっけ。

その時、水野君はとてもツラそうな顔をしてた。あの時、なぜか私まで苦しかったんだ……。

「蒼(そう)君っていうんだけど、蒼君もクラブユースの選手だったの。中でも春ちゃんとはいいコンビでね、二人は小中学校は別だったんだけど、練習で顔を合わせるうちに仲良くなって、二人の自主練に付き合ううちに私と蒼君も仲良くなったの」

蒼君の名字は宝木(たからぎ)というらしい。瑠夏ちゃんは二人のことを教えてくれた。

「二人ともチームの代表にスタメンで選ばれるほどの実力の持ち主だったんだよ。将来の夢はプロのサッカー選手になって、二人揃ってワールドカップに出場して、優勝すること……だった」

ニコニコと、でも時々顔を歪ませながら、過去形で話す瑠夏ちゃん。

気のせいかもしれないけど、その目が少し潤んでいるような……。

なんとなくしんみりした雰囲気になったので、その話はあまり突っ込んで聞かない方がいいのかなと思った。

なんて声をかけようか迷っていると、瑠夏ちゃんが再び口を開く。

「蒼君はいつもニコニコして優しくて明るくて、春ちゃんが落ち込んでると、バカなことをして笑わせようとしたり、しつこく絡んで考え込まないようにさせたり。そんな気遣いができる穏やかな人なんだけど、なんとなく桃ちゃんに似てるんだよね」

「えー、私が蒼君って人に似てるのは、しつこく絡んでいくとこくらいだよ」