私は直接蒼君と知り合いではないけど、水野君や瑠夏ちゃんから話を聞いているうちにもう友達になったような気でいる。

だから、お願い……逝かないで!

ダメだよ。

電車に乗っている間中、ゴツゴツした水野君の手が私の手を包みこんでくれていた。それは電車を降りてからもずっとで、そのせいなのか病院に着く頃にはずいぶん落ち着きを取り戻していた。

水野君といると安心するし、すごく落ち着く。心が安らぐ。水野君も、私といることでそう感じてくれていたらいいのに。

病院に着いて階段を駆け上がり、二階へと上がった。今日はおばあちゃんの病室ではなく、蒼君がいるであろう個室へと向かった。

このドアの向こうに蒼君がいる。

辺りはシーンとしていて、不気味な空気が漂っていた。再び鼓動がへんに高鳴り始める。

このドアを開けるのが怖い。でも、ここまできたんだもん。

「行くぞ」

震える私の手を強く握って、小さく水野君がつぶやいた。唇をキュッと噛みしめ、なにかをこらえているような水野君。

きっと水野君も不安なんだ。そして私以上に怖いはずだよ。

「うん、行こう」

ドアに手をかけ、引き戸を開けた。

ベッドの周りを取り囲むたくさんの人たち。こっちに背中を向けているから、顔は見えない。