「はぁはぁ……っ」
試合のあとだということもあって、体力がかなり落ちていた。足をあげるのがつらい。走るのをやめてしまいたい。
今の私を動かしているものは、早く行かなきゃという強い想いだけ。
「大丈夫か? ほら」
ペースが落ちてきた私の手を取って引っ張ってくれる水野君。水野君はいつもならこれくらいじゃ呼吸を荒げたりしないのに、とても苦しそうだ。
気持ちだけが焦って、落ち着かないんだと思う。
私はそんな水野君の手をギュッと握り返して、必死に足を動かした。
そして駅に着くと、カバンの中から定期を出して改札にかざす。手ぶらの水野君に小銭を渡す私の手が震えていた。
「大丈夫だ。絶対に、大丈夫」
「う、うん……はぁっ」
「行くぞ! すぐに電車がくる」
時刻表の電光掲示板を見上げながら、水野君はなぜか私よりも落ち着いている。きっとそれ以上に、私のほうが動揺していたんだと思う。自分がしっかりしなきゃと感じたのかもしれない。
水野君は再び私の手を取って、階段を駆け上がった。そして今にも発車しそうな電車に二人で飛び乗る。
電車の中で呼吸を整え、胸の鼓動を落ち着かせる。だけど胃の奥がキュッと縮むように締めつけられて痛い。