次にラタとクドが会ったのは1週間後。

彼女が先週と同じように土手にある階段に腰掛けていた時だった。

桜は少し前に満開を迎えだんだんと散り始めていた。

「ラタ」

名前を呼ばれ振り向くと先週と変わらぬ彼の姿。

「クド」

ゆっくりと歩いてきて、彼女の隣に座る。

「久しぶり、調子はどうだった?」

「どうって言われても……普通だよ 良くもなってないし」

何となくだけど、分かってしまう。

状態は少しずつ……悪くなっている。

「そっか……ねぇ、今日はラタの事たくさん教えて?」

「え?」

彼は本当にふしぎだと思う

「もっと君の事が知りたいんだ」

「何それ」

そう答えつつも少し彼女は笑った。

「いいよ、何から聞きたい?」

「えっとね……」

それから夕方の“ゆうやけこやけ”が流れるまで二人は話し込んでいた……



「……もうこんな時間か」

2人とも話をする事に集中していて時間の経過を忘れていた。

今日ももう病室に戻らなければいけない時間だ。

ゆっくりと腰を上げ、病院に向かって歩いて行く。

エントランスホールに入った時、1人の看護婦さんに声を掛けられた。

「あら、ラタちゃん 1人でどうしたの?」

「え? クドと2人で散歩……」

と言いつつ後ろを振り返った時にはもう彼の姿は無かった。

あれ? さっきまで後ろにいたよね?

「うん? お友達とお散歩してたの? 今日は冷えるから早めにお部屋に帰ってね」

「はい……」

それと同時にまた、部屋の号室を聞くことを忘れていた事を思い出した。