数日後、検査を終えて1人で病院の外を散歩していた。

病院の外に流れる川の土手沿いには桜の気が並んでおり、そろそろ満開を迎えようとしている。

「春……か」

一体いつまで私は生きられるんだろう

本当に良くなるの?

大人なんて信じられない

そんな事ばかり考えながら土手にある階段に腰掛けていた。

きっと、良くはならない

何回も何回も入院した

お母さんが前よりやせた

ネガティブな事ばかり想像し、ぼーっと川を泳ぐ鴨を見ていた時だった。

「そんな所で何してるの?」

自分と同じぐらいの幼い子供の声だった。

「……えっ?」

回りを見回すと少し離れた桜の木の陰に子供の影。

「あなたは誰……?」

声をかけるとその子はひょこりと頭を出した。

「僕?僕の名前はクド」

「クド……?」

銀に青みのかかった髪色をしていてとても不思議な雰囲気を纏(まと)っている。

僕と言っているということは男の子だろうか。

影になっていて顔は良く見えない。

「君は?」

少し魅入っていた彼女はハッとして答えた。

「あ……わ、私はラタ」

少年はラタの元に歩み寄りながら言った。

「へぇ、ラタっていうんだ いい名前だね?」

近くに来たクドの顔をよく見ると、それもまた不思議だった。

「……オッドアイ?」

彼が少し目を丸くしたように見えた。

「オッドアイなんて言葉よく知ってるね?」

緑と青の透き通った綺麗な色だった。

でも、哀しみが垣間見得(かいまみえ)る…そんな気がした。

「……」

どうしてこんなに悲しそうなんだろう

不思議ってだけじゃなくて奥の方に何か隠してる……?

クドと話をしながらそんな事を考えていた。

聞くところによると彼もこの病院に入院しているらしい。

学校には体が弱く一度も行ったことがないそうだ。

彼女自身はたまに体調がすごく悪くなるものの、元気な時は学校に行くことを考えている。

しかし、大事を取って…という事で親が通わせてくれないのだ。

特に運動会は競技には参加させてくれず、行けて養護用のテントが張ってあるところで皆が楽しそうにしているのを見ているだけだ。

それでも行かせてくれるだけでありがたいとは思わなければならない。

病院に戻り廊下でわかれた際、クドの入院している病室を聞くのを忘れていたことを思い出し、すぐに折り返した。

しかし、彼が曲がっていった廊下を見てもすでに姿は無かった。

急にふっと消えてしまった…

そんな感じがした。