そう…彼女は『あの人』じゃない。
だから違った想いで惹かれていく。
体を繋いで、必死でこの手の中に収めようとしていた、あの頃とは違うんだ。


「りん、愛してるよ」

「うん…知ってる」


瞳を閉じれば、愛する想いの波だけが沸き立つ。
キミに出逢えて良かった。
キミに愛を与えてもらえて良かった…。


ベッドの中で泳ぐように2人で縺れ合って、何度目かのキスの後…。

ふと見つめた天井にはいつもこぽこぽと清らかな水が浮かんでいるように見えた。


全ては無音。
何もかもが止まっているみたいだ。


「……りんは、どうして俺だったの?」


ふと口にしてから、なんて愚問をしてしまったのかと息を飲んだ。
こんなピロートークなんて、つまらないだけなのに。
2人裸のままで一瞬の沈黙。

何か話さなければと思案する俺の口に指を1本滑らせると、彼女は半身を動かせて俺の瞳をじっと見つめて来た。


「どうしても。欲しいと思ったの。この人とだったら、息を止めて自分を殺めてもいいって…。此処が私の居場所なんだって、そう…思ったの」

 
茶化すことなく告げられる精一杯の激情。

今、彼女を失うことになったら…俺は…。