語尾にたっぷりとハートマークをつけて、ニヤリと笑った瞬間――
「っっっっっっ!!」
伊吹君が美術室の前を横切った。
小柄で細身な身体に柔道着をまとった伊吹くん。
どう考えて強そうには見えないのに、中学時代は全国大会にも出場したことがあるのだとか。
いつもより少しキリッとした表情の伊吹くんが、美術室の前を横切って、その向こうにある柔道場へと歩いて行く。
いつもそばにいる双子の柏原太陽と夕陽(かしわばら たいよう・ゆうひ)くんも、もちろん一緒。
「桓武天皇♡」
「白河天皇♡」
「安徳天皇♡」
みんな推しキャラの名前で伊吹くんを呼ぶけれど、イラストレーターが同じなので基本的にみんな同じ顔。
だから、
「一条天皇が歩いてる♡」
私だって、ほかの部員に負けずそう呼ぶ。
私と伊吹くんの関係。
それはただの『赤の他人』――でもそれは、この日まで。
「っっっっっっ!!」
伊吹君が美術室の前を横切った。
小柄で細身な身体に柔道着をまとった伊吹くん。
どう考えて強そうには見えないのに、中学時代は全国大会にも出場したことがあるのだとか。
いつもより少しキリッとした表情の伊吹くんが、美術室の前を横切って、その向こうにある柔道場へと歩いて行く。
いつもそばにいる双子の柏原太陽と夕陽(かしわばら たいよう・ゆうひ)くんも、もちろん一緒。
「桓武天皇♡」
「白河天皇♡」
「安徳天皇♡」
みんな推しキャラの名前で伊吹くんを呼ぶけれど、イラストレーターが同じなので基本的にみんな同じ顔。
だから、
「一条天皇が歩いてる♡」
私だって、ほかの部員に負けずそう呼ぶ。
私と伊吹くんの関係。
それはただの『赤の他人』――でもそれは、この日まで。