本を読む時に必ず眼鏡を掛ける。
その片手にはいつも挽いたコーヒー。
ベランダで読むのが好きとか言って、
寒い朝にくしゃみをしながら読んでいる。
少し馬鹿。
その肩に薄手のカーディガンを掛けてあげたら、
寒いのは君だろうとか言って、
私に掛け返す。
そうしてまた、くしゃみを一つする。
私が呆れてため息を吐いたら、
君はくしゃっと微笑って、
これが一番なんだと言う。
だから私も、そんな日常が一番だって、
思ったんだよ。
ねえ、ユキ。
「会いたい……」
ぽつりと呟いた声は、まだ夜明けで薄暗い部屋の中に、静かに消えた。
また、今日も、君がいない日が、始まった。