「陽菜実...」





「えっ.....」



私は慌てて振り向く。




え..今.....



「えっ..えっ!?ええっっ!?」



「驚きすぎ、陽菜実が呼べって言ったんじゃん」



月野君が笑いながら言った。


「いや、まぁそうだけど...」



あ、嬉しすぎるっ...


「じゃあ、陽菜実も俺のこと名前で呼べよ?」


「えええっ!?!?マジですか...」


「マジです」


う、ですよね。


私は少し深呼吸する。


「と、智也...くん」


「”くん”はいらない」


ええっ

厳しいよ。

好きな人のこと名前で呼ぶって、こんなにも緊張するんだ....


「智也..」


どんな反応をしているのか気になって、智也の顔を見たら、少し赤くなっていた。

「結構恥ずかしいな」


恥ずかしい?

穂乃果にも普通に呼ばれているのに、なんでだろうと私は思った。

じっと見ていると、「ちょ、あんま見ないで」と言われ、さらに顔を赤くしていた。



可愛いっっ....!!!


まだ見ていたかったけど、怒られそうだからやめておいた。


「ふふっ」

「今笑っただろっもう、いいから帰ろっ」


そう言い、二人で教室から出た。


静かな廊下は私達が歩く音が響いた。

私の前を歩く智也は、ちょっとまだ赤かった。


名前で呼ばるなんて、すごく嬉しかった。


智也....智也.....

そう自分の心の中で何度も繰り返した。