さらさらの黒髪、真っ白な肌、細い指。
大きく口を開ける笑い方、細くなる目。
恥ずかしがると顔が赤くなるところ、
どんなに細かいことにも気づくこと。
これはわたしの恋のお話。
わたしが恋をして、やがて叶って、
そしてきっと終わる、そんなお話。
■私の好きな人
転入1週間目、ある程度かたまった友達と
ゆるやかに談笑するのが私の昼休み。
あるときは誰かの日記を笑い、
騒ぐ男の子達をみて笑う。
またあるときは、友人のひとりの恋愛相談を聞いたり、からかったりする。
中学一年生の三学期、わたしの日常。
こんな中途半端な時期に転入してきたわたしを、このクラスの皆は温かく迎えてくれた。
元から出入りの激しい学校ではあるが、
こんなにすんなり馴染めるとは思っていなかった。
少し、いや、とてもラッキーだと思う。
私の前の学校の話は、誰も聞かない。
きっとそんなこと聞いても意味無いから。
わたしたちはここで生きているし、ここで生きるしかない。
適当に話して、適当に勉強する。
そして何より学校に行くことがわたしの目標であった。
「愛美、もうちょっと頑張って話しかけたらいいのに」
「むりだよお〜。いいってそんなのお。」
頬杖をついてニヤニヤするこのみに、
大げさに首を振る愛美。
同じクラスのなんとか翔というのが愛美の好きな人らしい。
「そんなこと言って、このみはあいつとどうなの?」
すかさずつっこむのが沙苗。
このみは他クラスに彼氏がいる。
愛美、このみ、沙苗。
この3人はわたしがここで作った友人である。
揃いも揃って綺麗な容姿に、
勉強もよく出来るお嬢様たちだった。
おのずと男子にも人気があるが、
本人たちは気づいてないらしい。
「華は?好きな人とかどうよ。」
ぼーっとしていると沙苗に話しかけられた。
一気に3人の視線がわたしに集まる。
「いやあ、そんなことはまだ。あはは。」
正直、好きな人を作るなんて余裕はないし、もう一生できないんじゃないかレベルで恋をしたくないっていうのが現状である。
「なあんだ、残念。好きな人できたら教えてよね。」
沙苗はさっさと別の話にうつった。
私もほっと胸をなでおろす。
いつかはなさなきゃならないと思う、
わたしが恋をしたくない理由を。
それはわたしの一番楽しかった頃であり、
1番忘れたい思い出でもある。