わたしは母が嫌いだ。

仕事一筋で、
真面目で、
人目ばかり気にして、
自分を持っているようで流されやすくて、

ご飯を作るのも、
家事も、
あまり得意ではなくて、
おしゃれや流行りに疎くて、

それを認めなくて
我が道を進んでいて、

弱い心を持つ人を認めなくて。
自分が一番で
その事に自分自身が気づいてなくて。

そんな母に、
わたしは歳を重ねる毎に気づき、
そして、
落胆を感じていたのだ。

33歳。既婚。幼い子ども2人。
パート勤務。

わたしは
やよい。



久々に実家に泊まった年の暮れ、
わたしは母と喧嘩をした。

それはなんとも突拍子もないことで
鼻で笑ってしまいそうな内容だった。

今まで
真意の程は定かではないが
弟の妻が
お金に目がなく、
定年後も共働きで
且つ倹約家の両親へ金を無心にくるので
それを嫌がってるというような
話は聞いていたが。

そんなことともまた違った。

父に言いよる
"女の影"
を感じ取ったというのだ。


父は地元中小企業サラリーマンで
真面目に働き、
小さい頃、休みの日には
わたしと弟をよく
買い物などに連れ出してくれたものだ。

社会に出てからも、
保険だ税金だ、車の故障だと、
若かりしわたしには手も負えない
諸手続きを、わかりやすく教えてもらったし、たまに、薄給のわたしに
援助もくれた。

そんな実家を
なんの違和感もなく、
勝手に頼り、居心地良い場所として
新たな家庭を持った今も
よく訪れ、両親と下らない話をしていたのだ。

それが、...女の影とは...

母の勘違いだと思ったし、
信じたくも無かった。

母もだけれど、
父も、異性を意識しているようなルックスではない。
ごく普通のオジサンとオバサン。

そんな2人の間にそんな
ギクシャクがあったとは。

わたしは父の味方をした。
母が言う事に、勘違いだし、
万が一そういうことがあっても、
年齢も年齢なので

楽しませてあげればいいじゃないかと
言い放った。

喧嘩して、帰宅した後も
特に気にも止めなかった。
少し仲のいい職場の女性とのやり取りを
過剰に受け止めた
母の早とちりだとしか思わなかったのだ。